体の拡大とトレース
昔に考えていたことがふと解決したので書いておきます.
L/kを体のn次分離拡大とする. Lを含む代数的閉体Fを固定する.
(例えば, という状況を考える. この時L/kは必ず分離拡大になる.)
・LからFへのK準同型は全部でn個あることが証明できるので, それをと書く.
・Lの元xに対してはk線形写像である. xのL/kにおけるトレースを で定める.
この時, 次の事実は, (体論をよく使う人には)よく知られている:
今回は次の事実(メイン !)を経由して上の公式を示そう.
証明はの特性多項式が(xの最小多項式)^d (d=[L:k(x)])であることを示せばよく, これはそんなに大変でない.□
しかし, この場合固有値に対応する固有ベクトルがわからない. 次の主張を認めれば, 固有ベクトルを特定する形で証明ができる.
ブログを書いた時は多分成り立つでしょうという感じでしたが、証明しました(証明はここに書きました; http://wagomu.hatenablog.com/entry/2015/05/03/061454)。
定理2の証明にもどります。
まず, L/kの基底をとりに対して命題3の保証するをとる.ここで, (σはLからFへのk準同型)としてさだめる.
するととなる.
「k上の共役」という概念が「同じ最小多項式を有するもの」「k準同型による移り先」以外にも「掛け算作用素の固有値になっているもの」という言い換えが出来るのは少し、面白いと思いました。