冬の数学日記(Mathematic Diary in Winter)

数学系の話題がメインですが、他のことも多分書きます。

行列の性質についてのメモ(1)

例えば, ○ ○ な性質をもつ正則行列が欲しい、というような場合を考えると

{M_n(k)}の中で{GL_n(k)}にある種の稠密性が存在してほしい。

 

まず, GL_nの元はdeterminantという多項式に代入した値で特徴づけられるから, 最初に代数幾何的な稠密性を考えるのは妥当である. 即ちZariski位相に関する稠密性である.これは, {M_n(k) \subset Spec(k[T_1, \ldots, T_{n^2}])}として位相を入れるもので, Spec()の方に「任意の空でない開集合が稠密である」という性質があるのでM_n()も任意の空でない開集合は稠密.

 

また, kが代数体, 実数体,複素数体,p進数体の場合には{GL_n(k) \subset M_n(k)}は体の位相から誘導される位相についての稠密性があることが次の定理1からわかる.

定理1 kを位相体であって「任意の空でない開集合に無限個の点を含む」ようなものとする.{ f \in k[T_1,\ldots, T_n]\setminus}を0でない多項式とする.この時 {D(f) = \{x \in k^n \mid f(x) \not= 0\}}{k^n}の稠密な開集合である.

証明:{x=(x_1,\ldots,x_n) \in k^n}をfの零点とする.あるr>0でxのr近傍が全てfの零点になっていると仮定して矛盾を導く.

k^nの任意の1次元部分空間Vをとると, fはV上に無限個の零点を持つことがわかる.一方, ある変数Tを用いてfはV上でTの一変数多項式として表せるのでfのV上0になることがわかる.

従ってfはk^nの任意の点で0となるがkが無限個の元を含むことからf=0となってしまい, 仮定に反する. □

 

最後に: 上の2つよりもう少し詳しいことを調べてついでにここに書くつもりだったのですが, 順調に進まず, 中途半端ですがとりあえずここで筆をおきます.

一応どんなことを調べようとしていたかと言うと, 「{M_n(k)\setminus GL_n(k)}に含まれる部分空間について(主に次元)」です. 依然面白いとは思うので何か知っている人がいたら教えて下さい.

Catalan予想

イデアル類群の話、というタイトルでサークルで発表させてもらいました。

類数公式を虚二次体の時に求めて終わり。という感じでしたがCatalan予想の話もしたかったです。ここではCatalan予想について少しだけ書きます。完全に知りたい人は原論文を読むか, SpringerからCatalan Conjectureという本が出ているので読んでみてください。同じ古典的難問であったFermat予想の証明に比べて高度な技術を使わないため、比較的読みやすいです。

 

Catalan予想とは

 

X^n - Y^m = 1を満たす自然数の組(X,Y,n,m)でn,mが2以上のものは(3,2,2,3)しかない

 

というものです。この予想は1844年にCatalan(ベルギー)が予想し, 2002年にMihailescu(ルーマニア)により解決されました。

 

証明の道筋を書く前にStickelbergerの定理についてひとこと書いておきます.

 

スティッケルバーガー凄い!一番好きなバーガーです!(注:本当はスティッケルベルガーと読みます.)

 

証明の筋道は

 

① n,mを素数として良い

これはちょっと考えればわかります。n=pn', m=qm'とするとき

X^n - Y ^m = (X^n')^p + (Y^m')^q

となっているので素数の場合を考えれば全てカバーできるわけです。1の素数乗根を添加した体は扱いやすかったりして上手くできてるなあと思います。

 

以後, (☆)X^p - Y^q = 1 (p,q:素数)という方程式を考えます.

 

②p=2の場合, q=2の場合をそれぞれ独立に証明する.

これはあまり高度な技術は使わず, 歴史的にも随分前にできています

 

これによってp,qは奇素数として, 方程式☆の解が存在しないことを言えば良いことがわかりました.

 

③ 1 - X^p = Π(ζ^i - X) (ζは1の原始p乗根)と積に分解してQ(ζ)という体, Z[ζ]という環を考えます. 

代数的整数論が出来た当初のもくろみ通りにいかなかった理由が、ζ - X = α^q なるβ∈Z[ζ]が一般に存在しないということでした.

しかし前出のStickelbergerの定理を使うとある性質を満たす写像f:Q(ζ)→Q(ζ)について

f(ζ - X) = β^q となるβ∈Q(ζ)が存在することが分かります.(これはイデアル類群の消滅(+α)ということを意味しています.)

これを足掛かりにしてMihailescuはCatalan予想を証明したわけです. 

 

なお, Catalan予想を一般化したFermat Catalan予想というものがあり、これは今話題のABC予想が正しければそこから証明できるようです。

昔掲示板で…

僕がまだ高校生の時、casphy数学板で出会った問題です。面白かったのでいつか紹介しようとおもって忘れていたことを思い出しました。

http://www.casphy.com/bbs/test/read.cgi/highmath/1198099712/l50

例によって僕は適当なことを連発していたりするのですが(笑)


231 ブ リ ジ ッ タ [2011/04/27(水) 22:33:50]

△ABCの内接円とBC,CA,ABの交点をそれぞれD,E,Fとする。
BEとDFの交点をK、CFとDEの交点をLとする。
線分EKの中点をM、線分FLの中点をNとする。
∠EFM=∠FENを示せ。


【証明】

内接円をΓ、その中心をO、BE,FCとΓの交点をP,Q、DF,DEの中点をR,Sとおく。
また、ER,FSとΓの交点をT,Uとおく。

△OBD∽△ODRより
OE^2=OD^2=BO*RO となって
△OBE∽△OER
従ってO,R,P,Cが共円であることから
∠TRB =∠PRB がわかる.

よってT,PはBOに関して対称.
同様にU,QはCOに関して対称.

FE//RSから∠FSR=∠SFE=∠QTE 
従ってR,S,T,Uは共円より∠FUR=∠ETS .

ところで△FLE∽△FDU,△EKF∽△EDTであるから∠EFM=∠FEN

 

掲示板から多少訂正してあります。発想の順番としては最後の1行を先に考えていました。

移転しました。

旧ブログ(http://d.hatena.ne.jp/Wagomu/)より移転しました。以前は更新頻度がかなり低かったのですが、月に1回以上は更新したいと思います。

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内容

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