Catalan予想
イデアル類群の話、というタイトルでサークルで発表させてもらいました。
類数公式を虚二次体の時に求めて終わり。という感じでしたがCatalan予想の話もしたかったです。ここではCatalan予想について少しだけ書きます。完全に知りたい人は原論文を読むか, SpringerからCatalan Conjectureという本が出ているので読んでみてください。同じ古典的難問であったFermat予想の証明に比べて高度な技術を使わないため、比較的読みやすいです。
Catalan予想とは
X^n - Y^m = 1を満たす自然数の組(X,Y,n,m)でn,mが2以上のものは(3,2,2,3)しかない
というものです。この予想は1844年にCatalan(ベルギー)が予想し, 2002年にMihailescu(ルーマニア)により解決されました。
証明の道筋を書く前にStickelbergerの定理についてひとこと書いておきます.
スティッケルバーガー凄い!一番好きなバーガーです!(注:本当はスティッケルベルガーと読みます.)
証明の筋道は
① n,mを素数として良い
これはちょっと考えればわかります。n=pn', m=qm'とするとき
X^n - Y ^m = (X^n')^p + (Y^m')^q
となっているので素数の場合を考えれば全てカバーできるわけです。1の素数乗根を添加した体は扱いやすかったりして上手くできてるなあと思います。
以後, (☆)X^p - Y^q = 1 (p,q:素数)という方程式を考えます.
②p=2の場合, q=2の場合をそれぞれ独立に証明する.
これはあまり高度な技術は使わず, 歴史的にも随分前にできています
これによってp,qは奇素数として, 方程式☆の解が存在しないことを言えば良いことがわかりました.
③ 1 - X^p = Π(ζ^i - X) (ζは1の原始p乗根)と積に分解してQ(ζ)という体, Z[ζ]という環を考えます.
代数的整数論が出来た当初のもくろみ通りにいかなかった理由が、ζ - X = α^q なるβ∈Z[ζ]が一般に存在しないということでした.
しかし前出のStickelbergerの定理を使うとある性質を満たす写像f:Q(ζ)→Q(ζ)について
f(ζ - X) = β^q となるβ∈Q(ζ)が存在することが分かります.(これはイデアル類群の消滅(+α)ということを意味しています.)
これを足掛かりにしてMihailescuはCatalan予想を証明したわけです.
なお, Catalan予想を一般化したFermat Catalan予想というものがあり、これは今話題のABC予想が正しければそこから証明できるようです。